ユーザー目線でインバウンドを考える重要性〜HISバンコク事務所
HISバンコク事務所を訪れ、津田周和様(Managing Director)、西岡功二様(General Manager)、小泉優樹様(Manager Business Strategy Department)から、タイにおけるインバウンド、アウトバウンドの現状などについてお伺いしました。
1.神奈川県の協賛金によるツアー
神奈川県は、2月に開催されたTITF(Thai International Travel tour)に初めて協賛出展しました。その際に、協賛金により36%OFFの神奈川県のツアーを組んで募集したところ、即日で10名の枠が埋まったとのことでした。
一般のタイの旅行者が神奈川県の湯河原、大涌谷、城ヶ島、油壺、中華街、大山ケーブルカー、藤子不二雄ミュージアム、ラゾーナを旅行する内容です。横浜市の知名度は高いけれど、他の地域は知名度が低いとのことでした。
ツアーの目的が、神奈川県の著名ではない観光地の認知度をあげることなのか、参加者の意見を聞いて日本人にはない気づきや改善点を見つけることなのかが、両睨みなところがあり、得られたデータを県がしっかりフィードバックできるかが、税金活用の観点からも大切だと感じました。
写真:鎌倉ツアーも宣伝されていた
2.日本人が良いと思うものが良いとは限らない〜ユーザー目線で考える重要性
モニターツアーを実施するにあたって、神奈川県として外国人の方にきて欲しいところが選定されます。しかし、このモニターツアー参加者のフィードバックによると、日本人と違う感覚があることも伺えます。
例えば、城ヶ島のマグロ定食と言えば名物として多くの日本人観光客に好評ですが、ツアー参加者の4名がてもつけなかったそうです。これは、生の魚を食べる機会が少ないという文化的な違いもあると思われます。こういった部分は、しっかりと受け止め、活かして行く必要があります。
つまり、「私たちの視点で外国人を誘導しようとしても、必ずしもうまく行かない」ということです。
実はこの点はしっかりと考えないといけない点です。県議会の議論では、各議員が地域愛から、自分たちの地元を熱心に売り込むあまり、エビデンスに基づいた客観的な議論ができず、この手のツアーも総花的なものとなりがちです。あくまでもユーザー目線が先にある議論をして行く必要があると考えます。
「日本人ですらよくわからない観光地に外国人が果たして興味を示すでしょうか?」とは、示唆に富んだ言葉です。
また、ユーザー目線という点では、関東の交通機関の外国人向けパスの多さが挙げられていました。鉄道各社がパスを出しており、外国人観光客からは非常に,使い勝手が悪いとのことでした。関西では、交通事業者により協働的に運営される「株式会社スルッとKANSAI」によって周遊パスは一つに統一されていることが引き合いに出されていました。
さらに、日本に四季があることは、常夏のタイとは大きな違いだそうで、同じ観光地でも行く時期で違った顔を見せるため、同じ地域のリピートも結構あるとの話でした。四季が当たり前にある私たちには気づかない視点かもしれません。
この点は9都県市などの広域的な場で提案できる事柄ではないかという話にもなりました。
3.「神奈川県」という名称にこだわる必要があるのか?
神奈川県議会での議論では、必ずといっていいほど「神奈川県」の認知度のあり方が議論されます。しかし、残念ながら、神奈川県の外国人に対する認知度は必ずしも高くなく、横浜市の知名度にも及びません。
しかし、これが必ずしも悪いことなのかは考えなければなりません。HISの方からは、「みなさんがアンコールワットを訪れる時に、どこの自治体に属していますか?」というご意見を頂きました。
神奈川県という名前にこだわり過ぎるあまり、観光客誘致の本質を見失ってはならないと感じました。横浜という名前を用いる方が有用なのであれば、自治体間の縄張り意識一旦脇に置くことも大切だと思います。
他にも、タイ人のAirb&bの活用状況や旅行サイトとしてはタイ発の企業「アゴラ」の利用率が高いこと、所得格差も大きく富裕層は日本旅行に対して負担感もないことなど、タイ人観光客に訴求するためのポイントをいくつか伺うことができました。
写真:タイ語による湯河原の観光パンフレットを売り込む高橋延幸議員(足柄下郡選出)、このような案件を視察先に持って行くことも大切
HISバンコク事務所のみなさんは、日々神奈川県に限らず多くの自治体から売り込みのお話がやってきます。それだけに、神奈川県の観光政策の良いところ悪いところ、文面にしづらいことまで含めて、可能性などを忌憚なく意見交換することができました。
対応してくださった皆さんに感謝申し上げます。
千里の道も一歩から
神奈川県議会議員
菅原直敏