大連思派電子有限公司
【目 的】
インベスト神奈川によって誘致された中国系企業の現状を把握すること
【内 容】
大連思派電子有限公司の大連本社を訪問し、社長及び社員より会社の概要説明を受け、インベスト神奈川のワンストップサービスを利用した際の長短について意見交換を行った。また、帰国後、大連思派電子有限公社の日本支社を訪問し、誘致の状況などを調査した。
写真6:大連思派電子有限公社の会議室で説明を受ける
① 会社の概要
大連思派電子有限公司は、インベスト神奈川のワンストップサービスを利用して神奈川県に進出した3番目の中国系企業である。社長も社員も30代中心で、若く活力のある企業である。主な概要は以下である。
●創 業 日:2004年5月14日
●代 表 者:取締役社長臧 義政
●従 業 員 数:125名
●売 上:約2億円(2008年度)
●事 業 内 容:
・日本向けITオフショアサービス
・システム設計、製造、保守管理 他
② 何故、神奈川県に進出したか
大連思派電子有限公社は、インベスト神奈川のワンストップサービスを利用して、関係機関の協力の下に日本進出を果たしたと、県により報道発表されている。そこで重要なことは、インベスト神奈川の利用者としての意見や、なぜ神奈川県を選んだのかということである。
社長自身は日本進出の予定があり、そこに神奈川県大連事務所の所長がプロモーション活動をかけたことがきっかけとなったとされている。但し、後日の日本における調査で、大連思派電子の進出した先は、元々取引のあった日本の企業の本社があり(日本支社は会議室などをその企業と共有)、その企業との関連性で神奈川県を選ぶ必要があったという事実も看過できない。また、インベスト神奈川の現状については、社長は概ね満足をしている様子であった。
③ 日本支社の現状
日本支社の現状も視察した。従業員数は5名とのことであったが、事務所に伺っても人気はない(電話が通じなかったため直接訪問)。郵便物の委託先であった株式会社エフケイジャパンを訪れてみる。そこでお話をお伺いすると、大連思派電子有限公社の日本支社は営業活動の拠点であり、社員が出払っていることも少なくないようである。私が想像していた形態とは多少異なるようである。
大連思派電子有限公司は、日本進出前からエフケイジャパンと取引があり、その関連から近所に進出した経過もあるようである。日本支社長のような者はおらず、臧社長が頻繁に日中を往復し、業務を回しているようである。残念ながら、日本支社の現状を完全に把握することはできなかった。
④ 羽田空港国際化の重要性
社長とのやり取りの中で、中国と日本の間を頻繁に飛び回るビジネススタイルが明らかになった。中国はその日本からの近さも進出の大きな理由となっている。これらの時間距離をより短縮していくことは、神奈川県の強みを増すことにもつながる。羽田空港とアジアの主要空港を結ぶ航空便の整備は重要であると同時に、要望も少なくない。
⑤ 総括
大連思派電子有限公司の神奈川県進出は、企業戦略に依るところが大きく、その点でインベスト神奈川がその選択のきっかけになり得たわけではないとも考えられる。しかし、進出するにあたり、インベスト神奈川のワンストップサービス(むしろ所長の人間力とも言えるかもしれない)がそれなりの役割を果たしたことは事実である。
日本支社の現状も視察したが、実際のところどこまで県民の利益にかなうかは未知数である。進出企業の今後の成長次第である。まさにインベスト(投資)効果が将来的には問われる。より正確な理解のためには中国系の他の2社を調査する必要性もある。