菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

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神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

第4章 制度の現状 2.何故、制度を維持するか

2.何故、制度を維持するか

制度維持の3つの理由

 年金基金を運用する共済会や制度の維持を進める政府の関係者は、地方議会議員年金制度が多額の税金投入なくして継続することができないこと、そしてこれ以上の税金投入が理論的・世論的に困難でることを知っている。それにもかかわらず制度維持に執心するのには大きな理由がある。それは既得権者が多いこと、国会議員が既得権者に配慮すること及び政府(総務省)の面子を保つことである。

 現在、年金受給者と有資格者は10万人以上いる。現役会員が約3.8万人であるから、如何にその数が多いかが分かる。従って、制度を廃止するためには、これらの既得権者を説得する必要があり、困難を極める。

 次に、地方議会議員年金は本来地方の自主性によるべき制度であるが、地方公務員等共済組合法の中に定められているため、その改廃を決定するのは国会の役割となっている。即ち、国会議員の過半数が制度廃止を決定すれば、制度は廃止されることになる。しかし、実際には、制度設立から約半世紀に渡り国会議員超党派でこの制度の延命してきた。国会議員の多くは地方議員の支援を受け選挙を戦っているため、地方議員との摩擦を避けたいという政治的な意図が根底には存在する。

 さらに、同制度を廃止するやり方次第では、所管官庁である総務省の面子をつぶすことになる。「役人は間違わない」という建前が霞が関には存在するからである。

総務大臣答弁の矛盾

 平成21年に政権交代が実現し、自民党を中心とした政権から民主党を中心とした政権に変わった。「地域主権」と「ムダ全廃」を訴えた民主党政権の下では、この地方議会議員年金制度も大幅な見直しをされることが期待された。しかし、原口総務大臣は平成22年3月15日参議院予算委員会において、地方議会議員年金制度を堅持する姿勢を明確にした(38)。但し、この答弁には大きな矛盾が存在した。

 第一に、国家財政の関係から国会議員年金を廃止したとしているが、国会議員年金にかかる国庫負担は年間約20億円であるのに対し、地方議会議員年金制度にかかる地方負担は年間250億円以上である。もちろん、多くの自治体予算の原資は国庫による部分が大きいわけであるから、地方議員の年金制度を廃止する方が遥かに大きな財源効果を生むことになる。

 第二に、原口大臣は「地域主権戦略(原口プラン)」を示して、政府として地域主権を最優先課題として進めることを明確にした。そして、この地域主権の根幹は「地域のことは地域の住民が決める」という住民自治の考え方である。従って、「地域のことを国が決める」地方議会議員年金制度は廃止されることが論理的に最も整合的である。

 以上からも、原口大臣の発言には大きな自己矛盾が存在することがわかる。もちろん、原口大臣もこれらの矛盾点は分かった上で、前述の理由から意図的に制度維持の答弁をしていると思われる。

(38)「国会議員は年金廃止しましたけれども、本当にそれでいいんだろうかと。私はしっかり(地方議会議員年金制度を)支える方向で議論を進めてまいりたいと、こう考えているところでございます。」、山根隆治委員への答弁