菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜共生の共創・自分らしく生きる〜

神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

82歳のおじいちゃん〜スマートフォンは生活必需品

20120306naosan.jpg

昨日は終電で名古屋に訪れ、宿泊したのですが、急遽舞い込んだタスクのため半徹夜で朝を迎えました。7時前の名鉄線に乗り込み、1時間半の車中にPCを開きながら、なんとかタスクを終了し、三重県玉城町のある田丸駅に到着しました。

同町を訪れたのは「ICTを利用した安心・元気な町づくり事業」を調査するためです。

2月の初旬だったでしょうか、テレビ番組でスマートフォンを楽しそうに扱いながら世間話をするおばあちゃん・おじいちゃんの映像をたまたま見て、予算委員会でICTの活用を取り上げようと考えていた私のアンテナにかかり、今回伺う事にしました。行政や議会関係者がよく言う「高齢者はICTが扱えない」というステレオタイプを打ち破る事例調査の位置づけにあります。

●制度設計の概要〜玉城町役場

20120306smart.jpg

最初に訪れたのは玉城町役場です。若手の生活福祉課の中西司主事の方にシステムの概要や現状と課題を伺いました。

スマートフォンの活用という切り口で見た場合、大きく分けて2つの事業があります。オンデマンドバスシステムと安全見守りサーヴィスです。

オンデマンドバスシステムは、路線バスの縮小に伴い導入された福祉バス事業を、予算を欠けずにサーヴィスを向上させたいという理由で導入されました。既存のオンデマンド交通の問題点を克服しながら、効率的に運営される公共交通として注目されていますが、その予約方法の一つとしてスマートフォンのアプリを用いる事が出来ます。ちなみにこのバスは「元気バス」と呼ばれています。

次に、安全見守りサーヴィスはスマートフォンに安否確認ボタンを搭載させるアプリを導入する事で町内どこにいても(理屈的には電波の繋がる場所であれば世界のどこにいても)、ボタンを一つ押せば安否情報が社会福祉協議会や家族等に伝わるシステムです。

役場で説明を受けた後、議場を見学して、同町社会福祉協議会に向かいました。

● 利用者の現状〜玉城町社会福祉協議会

20120306anpi.jpg

玉城町社会福祉会館を訪れ、社会福祉協議会の西野公啓事務局長と実際に利用されている82歳の男性の方に実際の利用状況について伺いました。

安全見守りサーヴィスについては、事務局長から実際に実演をしてもらいました。スマートフォンの安否確認ボタンを押すと、社会福祉協議会にあるパソコンにその情報が転送され、緊急情報としてお知らせがきます。また、登録されている最大5名の方の携帯にも同様の内容が転送されます。

また、利用者の奈尾一さん(82歳)から実際の利用状況について、お話を伺いました。世の中の一部では年配の方はスマートフォンのような機器を使えないというステレオタイプを語られますが、彼の話はその考え方を180度覆すものでした。

彼が主に使っているアプリは、前述した二つですが、スマートフォンの使用にも問題もなく、このシステムのお陰で出歩く機会も増えたとの事でした。「生活必需品」という彼の意見が印象的でした。

事務局長からは続けて、スマートフォンの導入ばかりが注目されるが、大切な事はその裏にもあるとの説明を受けました。つまり、安全見守りサーヴィスが実際に利用された事は、幸いな事に、ないのですが、そのサーヴィスがあることで家族等も安心して高齢者の方が外に出て行く事を見守る出来ることがあります。

また、スマートフォンには個人の情報を収集する機能もあるので、希望される高齢者の方には、その情報の発信状況によって、社協側が安否状況を確認する事にも役に立っています。仮に発信状況がなくなれば社協の職員から安否確認のメールを本人に送る事も出来ます。神奈川県ではこのような安否確認のために県営住宅の中にセンサーを設置する事業等も行っていますが、費用対効果を考えると、玉城町の取り組みは参考になります。

また、スマートフォン等の利用によって逆にフェイスtoフェイスの関係が深まったとの、少し逆説的な成果もあったようです。これらのサーヴィスによって高齢者が外に出歩くようになり、社会福祉会館に集まる高齢者の方も増えているとの事でした。

新しい技術が出てくると、それを使える人が若い人を中心とした一部の人たちと捉えられがちですが、実際はそれらをうまく活用する事で社会全体をよくしていく事ができるという好例であったと思います。