菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

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神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

第3章 制度の比較 1.国会議員年金制度(平成18年に廃止)

1.国会議員年金制度(平成18年に廃止)

制度の沿革

 国会議員の年金制度は、正式には国会議員互助年金という。国会法36条(21)に基づいて国会議員互助年金法で定められた。

 互助年金制度ということで発足し、昭和33年4月11日議会運営委員会における同法提案者による説明の中では「国会議員の互助の精神を根本といたしまして、努めて国庫の財政的負担に依存することを避けまして、議員全員の平等の醵出(きょしゅつ)によって、長年在職した同僚の退職年金制度をまかなうことを基本方針」とする説明がされている。しかし、初年度は黒字となったものの、月額歳費に対して3/100という負担のみで年金財政を賄うことはできず、翌々年度には国庫負担金が投入されている。最終的には国庫負担率が7割程度になった。

同制度は、世論の大きな批判を受け、平成18年2月3日に国会議員互助年金法を廃止する法律が可決され、同年4月1日に国会議員互助年金法は廃止された。但し、「廃止」とは、全ての給付が一切廃止されたことを意味するわけではなく、以下の経過措置が設けられた。

既に年金を受給している者に対しては、給付額を4~10%減額されるが、そのまま年金給付を受けられることとされた(国会議員互助年金法を廃止する法律3条)。現職議員で10年未満の在職期間を有する者は、納付金額の80%を退職時に支給することとされた(同法13条)。現職議員で10年以上の在職期間を有する者は、退職一時金を退職時に受け取るか、給付額を15%減額した額で年金を受け取るかを選択できることとされた(同法9条)。

以上のように、国会議員互助年金法は廃止されたが、最後の既得権者がいなくなるまで制度自体は継続することとなった。最後の既得権者がいなくなるのは40年以上先のことである。

なお、国会議員の年金制度は、多くの国で見られ、主要先進国はほぼ全ての国がなんらかの年金制度を有している。従って、日本は、職務に専門性と専業性が求められる国会議員に年金制度がなく、素人的かつ非常勤の地方議員には年金制度がある、世界的に見れば非常に特殊な国となった。

制度の概要

 国会議員年金の給付は、互助年金と互助一時金の2種類ある。互助年金には、普通退職年金、公務傷病年金及び遺族扶助年金があり、互助一時金には退職一時金及び遺族一時金がある(国会議員互助年金法2条)。

 普通退職年金(同法9条)は、在職期間が10年で退職した者に対して支給される。10年の在職期間で退職した者の年金額は、退職時の歳費の年額に50/150を乗じて得た額とされる。その後、1年在職期間が増えるごとに乗数に1/150が加算される。例えば、制度廃止直前における実際の支給額は、10年在職者で412万円、30年在職者で576.8万円となる。

 公務傷病年金(同法10条)は、国会議員が公務に基づいて傷病に因り重度障害の状態となって退職した場合に給付され、在職10年未満の者にも支給される。

 遺族扶助年金(同法19条)は、普通退職年金又は公務傷病年金の有資格者が死亡した場合、その遺族に対して給付される。その額は原則として退職年金額の1/2である。

 退職一時金(同法10条の2)は、国会議員が在職期間三年以上十年未満で退職したときに支給される。また、遺族一時金(同法19条の3)は、前述の退職一時金の有資格者が死亡した場合に、その遺族に対して同程度の額が支給される。例えば、制度廃止前の退職一時金の額は、在職年数が3年の場合296万円であり、在職期間が9年の場合889万円である。

地方議員年金との相違

 地方議会議員互助年金制度は、国会議員互助年金制度に準じて制度設計されたため、基本的な内容は類似している。大きな違いとしては、在職期間要件が、地方議会議員の場合12年で、国会議員の場合10年であることや、掛金やそれに対する給付額が挙げられる。

 近年、地方議会議員年金制度は社会保険方式であり、国会議員年金制度は恩給方式で運営されていたという点で異なるという意見があるが、この点は誤認である。なぜならば、昭和33年4月9日衆議院本会議での国会議員互助年金制度の提案理由において、「議員相互の互助の精神をその根本といたしたのでございます。すなわち、本制度は、年金の全部を国庫の負担とする建前をとらないで、醵出制によって、議員の受ける退職年金は議員が納付する掛金をもってまかない得るようにいたしたのであります」と明言されており、この考え方は加入者が一定期間保険料を拠出し、それに応じて年金給付を受ける社会保険方式を原則とする。さらに、財源としては税財源ではなく会員の掛金である社会保険財源を念頭に置いている。平成18年5月16日衆議院総務委員会において初めて参考人が恩給方式である言及を行っているが、これは国会議員互助年金制度が結果的に7割という公費負担率で運営されていたという現象を表現したに過ぎず、国会議員互助年金制度が恩給制度であるわけではない。

 さらに、公費負担が地方議会議員年金の場合4割強、国会議員互助年金の場合7割強とされることに違いがあると指摘されることもあるが、国庫負担か地方負担かの違いはありながらも、国民の負担であるという点では相違はなく、割合の多寡をもって両制度の根本的な相違とすることは適当ではない。

(21)「議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる。」