介護・福祉の施設・活動を巡る旅48件目〜刑務所における福祉的支援〜播磨社会復帰促進センター
播磨社会復帰促進センターを訪れ、同センター長他から施設の概要を伺い、施設内を案内して頂きました。
写真:センター長と一緒に施設入り口前にて。
1.刑務所の今~豊富な職業訓練プログラム
平成18年に「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」が施行されたことに伴い、明治41年から100年以上続いた監獄法が廃止されました。この法改正により、受刑者の管理重視の考えから、処遇重視の考えに変わりました。
この流れを受け、同センターでは約20に上る職業訓練を実施しています。その内容は、技能系、サービス系、医療・介護系からパソコン系まで多岐に渡ります。特に興味深かった訓練は、スマートフォンアプリの開発にかかるものです。私が見学した際にも、十数名の受刑者がJAVA言語の入力作業を行っていました。
この他にも、受刑者が望む場合、プログラムにない通信講座等も受けられるとのことでした。私の持っていた刑務所のイメージは刑務作業にひたすらとりくむ受刑者の姿でしたが、現在は受刑者の円滑な社会復帰に向けた職業訓練に力をいれています。
図:社会復帰に向けた取り組み(出典:播磨社会復帰促進センターHPより)
2.PFIの是非
同センターは、建物を国が建て、施設の管理、収容監視、整備、受刑者処遇の一部を民間企業に委託するPFI(Private Finance Initiative)の手法を導入しています。このようなPFIによる刑務所は全国に4か所あります。委託先は、播磨大林・ALSOKグループを構成する各企業の出資によるSPC(Special Purpose Company=特別目的会社)である「播磨ソーシャルサポート(株)」です。
PFIのメリットとして、経費の削減がまず挙げられます。15年間の委託契約で、国が単独で運営した場合(253億円)よりも6億円の経費節減の効果があるとのことでした。但し、この節減効果が多いか少ないかは、デメリットと比較して意見が分かれるところかもしれません。
その他のメリットとして、前述した多様な職業訓練プログラム(通常の刑務所は4~5程度とのこと)や後述する手厚い福祉専門職の配置があります。
デメリットとしては、SPCは利益をあげなければならないため、職員の人件費を下げたり、施設の補修や備品の補充についてセンターの思い通りにならなかったりすることがあるとのことでした。また、委託期間が有期であるため、長期的な運営の見通しという点で課題があるとのことでした。
3.刑務所における福祉職の役割の重要性
平成26年度より、刑務所には福祉専門館として、5年以上の相談援助業務の経験をもった社会福祉士または精神保健福祉士を配置することになりました。しかし、通常の刑務所では多くは配置できていない現状があるとのことでした。
一方で、同センターではSPCにこの部分も委託しているため、社会福祉士、精神保健福祉士及び臨床心理士などを複数名配置し、手厚い支援体制を築いていました。実際にソーシャルワーカーの方々とも少し意見交換をしましたが、刑務所におけるソーシャルワークの重要性がますます高まっているとのことでした。
この他、職業訓練で作った成果物(例えば農業園芸課の職業訓練で作った農作物)は無価値物として売れないけれど、刑務作業で作った成果物はうれること、受刑者数は平成18年12月が約81,700名でピークであったものの、現在は約57,000名で刑務所に空きが出てきていることなど、刑務所にかかる基本的なことまでご教授頂くことができました。
ご丁寧に対応頂いたセンター長を始め職員の皆さんに感謝です!
大 和市内訪問施設・活動:15件
神奈川県内訪問施設・活動:14件
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千里の道も一歩から
菅原直敏