菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜共生の共創・自分らしく生きる〜

神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

働き方改革で増える県庁の仕事

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一昨年、安倍首相が表明した「働き方改革」は、良くも悪くもバズワード(流行語)化し、神奈川県における議論にも影響しています。

 

厚生労働省のHPには、「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています、とあります。

 

「働き方改革」という言葉が出てきた背景には、日本人の働き方に大きな課題があり、今まで私たちの生活に大きな悪影響を及ぼしてきたという反省の念があると思います。従って、日本人の働き方に問題があることを明示した点で「働き方改革」という言葉には大きな意義があったと捉えています。

 

しかし、実態は残念なこともあり、神奈川県においては「働き方改革」のために、逆に仕事が増えるという負の連鎖に陥っている部分もあります。私も一年間、所属する文教常任委員会において議論されている教員の働き方改革の経緯でもそれを痛感しました。

 

「働き方改革」が行政の仕事を増やす理由は大きく分けて以下の3つがあると考えます。

 

 

①「働き方改革」の目的化

②データに基づかない感情論

③現場を無視した手法

 

 

 

 

 

1.「働き方改革」の目的化

 

「働き方改革」を標榜するまでもなく、日々の業務の効率化・適正化による職員の業務負担の軽減は実施されなければならないことです。逆に、「働き方改革」という言葉が出てきた背景には、普段の業務の見直しが職員の働き方をよりよくするためにしっかりと行われてこなかったことを意味します。

 

また、国が「働き方改革」を概念化して事業化したり、首長が「働き方改革」を標榜しだすと、「何か新しいことをしなければならない」という空気が庁内に蔓延し、「働き方改革」のための審議会や事業が新規に立ち上がります。これが職員の仕事を増やし、結果的に「働き方改革」に逆行します。

 

もちろん、意義ある仕事だったら良いのですが、今まで当たり前にやって来るべきことに対し、屋上屋を重ねたり、働き方の本質論とずれた形式的な取り組みが増えることは、職員の負担以外の何物もありません。

 

なお、神奈川県教育委員会でも平成29年12月に「県立学校教員の働き方改革にかかる懇話会」を設置し、有識者の方々から教員の「働き方改革」に対する様々なご意見やご提案を賜っています。

 

「働き方改革」という名の事業が目的化する、これが行政の仕事を増やす第一の理由です。

 

 

 

2.データに基づかない感情論

 

「働き方改革」が行政資料に記載され出すと、当然議会でも議論されることになります。もちろん、ここで「働き方改革」が形式的なものから本質的なものに添加される議論に生まれ変われば問題ないのですが、残念ながら議会での議論が行政の仕事をさらに増やすことになります。

 

それは、データに基づかない感情的(時として恣意的)な議論に陥りがちだからです。

 

著名な学者の著書にもありましたが、議員は耳学問を好みます。メディアや有権者から伝聞された問題を基に、「働き方改革」に関する持論を展開する議員は少なくありません。もちろん、耳学問や有権者の声を考慮することは大切なことなのですが、もっと本質的なデータや労働関連法制にかかる専門的知見を踏まえた議論が前提としてあって生きてきます。

 

また、中には支援団体の絡みも無視できません。例えば、「先生を増やせ」という主張も、データベースに基づくものではなく、支援団体の意向を忖度し、それに都合の良い論拠をもってきて展開されるならば本末転倒です。

 

さらに、最近は県議会レベルだと専業化している議員が増えています。このこと自体には特段是非はありませんが、広く一般市民のリアルな働き方を体感できていない議員が多くなっていることの裏返しでもあります。中には政治経験しかなく議員になられる方も増えています。政治の世界は特殊な世界で、この世界の感覚で議論をすると時として的外れな展開になることもあります。議員こそ働き方改革が必要だと自虐的に言われてしまうくらいですから、その点はお察しください。

 

「働き方改革」について、議会でもデータに基づかない感情論が優勢になることが少なくないことも、行政の仕事を増やす第2の理由です。

 

3.現場を無視した手法

 

「働き方改革」を目的とした事業に、感情に基づいた議論が加わると、本質とは乖離した手法が生み出されます。これが結果的に職員の仕事を増やすという悲劇を引き起こします。

 

例えば、前述した懇話会で、県立学校教員の働き方改革に関して、「業務効率化につながる一人1台パソコン整備を進める必要」「ICTを積極的に活用できる環境の整備」について提案がなされていました。しかし、ICTの導入が即ち業務の効率化に繋がらないことはよくあることです。どのような理念でICTを活用してくかが先になければ、むしろ業務負担を増やす可能性すらあるためです。さらに懇話会のメンバーにICTに明るい人がいない点も気になりました。

 

そこで、県の教育委員会にそのあり方を正したところ、残念ながら本質的な理念に関する回答は得られませんでした(この点についてはまた別途ご報告します)。

 

 

以上が、私が所属する神奈川県議会文教常任委員会での議論の経過も含めて、「働き方改革」が行政の仕事を増やすと考える理由です。

 

私は「働き方改革」が目指す理念自体は、良いと思いますし、私自身も別の表現になりますが目指してきたものです。むしろこれらの問題は、行政や議会の組織体制、運営方法、慣習にかかる根本的なものであり、おおよそどの分野にも当てはまる喫緊の課題であると捉えています。

 

これらを解決するために、私は議員の知見の向上とEBPMなどの取り組みの両輪が必要であると考えています。

 

 

EBPM…証拠に基づく政策立案

 

千里の道も一歩から

 

神奈川県議会議員

 

菅原直敏

 

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