菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

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神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

贅沢な調査活動~「議会改革ブレークスルー10のセオリー」

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写真:松野議員の所属する会派の控え室でプロジェクターを用いながら説明を受ける様子

流山市議会のICT化の取り組み等を調査しました。

流山市議会の議会改革、特にICT化の取り組みは全国的にも有名であり、第5回マニフェスト大賞・最優秀成果賞を受賞するなど、各方面で評価されています。

対応して下さったのは、流山市議会改革の仕掛け人松野豊市議です。

調査の調整は普段から色々と情報交換をさせて頂いている森亮二市議です(当日は、常任委員会でしたので残念ながら対応は頂けませんでしたが、ネット中継で質疑の様子を拝見することができました)。

このように個人の伝で調査を行いましたが、最初に議場を議会事務局の職員の方にご案内頂いた後は、松野議員が数時間にわたり対応して下さり、非常に多くの知見を得ることができました。松野議員は様々な場所で講演活動をされている方ですので、ある意味相当贅沢な時間を独占させて頂いたことになります。

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流山市議会の議会改革の取り組みが素晴らしい点は、平成21年議会基本条例から始まり、「ICTの推進を求める決議」を全会一致で可決し、それに基づいて「ICT推進基本計画」を策定した上で、しっかりとした理念とヴィジョンに基づいて議会改革を進めてきた点でしょう。計画を持って物事を進めていくことは当たり前のことと一般の方は思われると思いますが、議会の合議機能が不全を起こしていることが常であり、結果的にモザイク的な体系性のない議会改革が行われることが大半です。松野議員は、このICT計画が一つの全国モデルになればとおっしゃっていました。内容は体系的であり、各議会で一般化できるよくできるものです。

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議場ではスマートフォンを用いた採決システムを視察しました。

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写真:モバイル端末

DOCOMOに特注したモバイル端末を用いて、採決を行うことができます。卓上の押しボタン式の設備にすると700万円以上かかるところ、この形式だと150万円で済んだそうです。予算がない中で如何に効率的なシステムを導入するかを考えた結果だそうです。

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写真:議場にはプロジェクターが設置される

賛否を問われたときに、モバイル端末のボタンを押すと、正面のプロジェクト画面に賛否の結果が表示されます。

このシステムを導入した結果として、住民が各議員の賛否の結果を迅速に知ることができ、採決結果に対する問い合わせなどもくるようになったとのことです。また、懸念されていた年配者の方々の利用についても問題なく運用されているそうです。

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次に、Ustreamを用いた委員会中継の取り組みも大変参考になりました。

予算が厳しい中、既存の配信サーヴィスを導入すると数百万円の費用が必要になります。しかし、Ustreamを導入すれば、初期投資に数十万円はかかるものの、あとはランニングコストに関しては人件費を除けばほぼ費用をかけずにできます。課題としては、配信の安定性とITを駆使できる職員の育成だそうです。

松野議員との意見交換中も、都市建設委員会の中継を同時で見ていました。

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最後に、議会改革の取り組みはその一つ一つをとってみれば、特段奇抜な内容があるわけでもなく、技術的な困難を伴うものでもありません。費用の問題も流山市議会のように知恵を絞って解決することは可能です。しかし、それにも関わらずなぜ多くの議会において議会改革が遅々として進まないのかが、2人の話題になりました。

そして、この点について松野議員が興味深い見解を示しているので、以下に引用してご紹介します。まさに卓見です。私も似た感じの認識を持っています。特に新人の議員さんはご覧になってみて下さい。

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「地方議会改革を推進したいけれど、

なかなかうまく進まず困っている」

という現職の地方議員の方々向けに、

「議会改革ブレークスルー10のセオリー」

と題して、ブログを書いてみました。

10のセオリーを書き終えてみて、

このほかにもセオリーはあると感じます。

この記事がキッカケとなって、

全国に散らばる改革派地方議員のトップランナーたちが、

他のセオリーもドンドン更新して、

この火種が全国に波及し、

地方から日本を、

より良く変えていくキッカケになったら、

とっても嬉しい限りです。

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【Theory1】

議会改革は議員同士のコミュニケーション改革。

主義主張や方法論が違っていても、

 自分たちの故郷をより良くしていこうという思いで、

 選挙を戦って有権者から選ばれた人たちなのだから、

 ひとつになれる。

 という信頼ポイントを置いて、

 まずは、

 会派党派を超えた一人の人間同士という関係を創り上げる。

 また、五感を開いて、相手をよく観察し、

 相手議員の本音と建て前を、しっかりと見極める。

【Theory2】

地方議会に関わる法律(主に日本国憲法地方自治法)や、

仕組み(議会(代議)制民主主義、二元代表制など)

を正確に理解をして、自分自身の腹に落とす。

※自分自身が勉強して得た知識を、

 他の議員にひけらかすような態度は、

 おくびにもみせてはならない。

 議員同士で議会改革の議論や自由討議をする際には、

 あくまでも淡々と論理的に議論をする。

【Theory3】

法律を紐解いて、地方議会の存在意義や、

民主主義とは主権在民であり、

代議制であることからも、

市民に開かれていない議会などあり得ない。

また、二元代表制(執行機関と議事機関=対等・協力)

ということを、

議員全員対象の研修会を企画して、

大学教授などの学識経験者から、

語ってもらう。

※講師選定の基準は、学識だけでなく、

 地方議会の実態も御存知かどうか?

 「あの先生は有名だから」とか安易な基準で、

 講師選定をするのではうまくいかない。

 講師の先生には、

 自分が所属する議会の問題点や課題について、

 予めレクチャーしておいて、

 講演後のゴールイメージを講師の先生と、

 共有しておく。

【Theory4】

議会改革先進地に議員個人や会派単位で行くのではなく、

議会運営委員会や議会改革特別委員会等、

議会の委員会として行く。

※視察後、「良かったね」とレポートを提出したり、

 ブログや会報誌で報告をして終わるのではなく、

 委員会で振り返りの会議を開催する。

 「うちの議会で実現するには」という観点で、

 議員同士で前向きに議論をしアクションプランにまで、

 落とし込まなければ、いつまで経っても前には進まない。 

【Theory5】

議員(個人)の活動と、選挙のための活動、会派の活動、

議会としての活動の棲み分けを明確にする。

※個人プレーで目立てば選挙には強くなるが、

 議会改革を牽引する存在には成り得ない。

【Theory6】

自分の手柄にしない。

※議会は合議制の議事機関。

 過半数の同意を得ることができなければ、

 様々な施策を実行に移すことは不可能。

 たとえ自分が発案者であったとしても、

 これを「自分が実現しました」とか言って、

 メディアに自分が登場するのではなく、

 先輩議員やキーマンとなる議員に、

 手柄を譲る謙虚さとしたたかさが必要。

 委員長ポストについているなどの関係で、

 自分が前に登場せざるを得ない場合でも、

 協力や賛同してくれた委員さんたちを、

 公の場で心から労う配慮が不可欠。

【Theory7】

議員同士の議論の様子を中継する。

例えば、

USTREAMであれば初期投資は、

ほぼかからない。

守旧派で議会改革に反対する議員に限って、

 意外と有権者の目を気にする傾向がある。

 議論の様子をライブ中継することで、

 カメラの先にいる有権者を気にして、

 非建設的な意見を発しなくなる。

【Theory8】

議会内で合意形成できたものは、

決議等で議決をして機関決定する。

※議決して機関決定をすることで、

 決めたことに重みが増していく。

 俗にいう申し送り事項では、

 改選後に本当に申し送られるだけで、

 終わってしまいアクションにつながらない。

【Theory9】

議会事務局を味方につける。

※議会事務局のサポート(特に法制面)がなければ、

 議会改革の推進はない。

 議会事務局のスタンスは、

 実現できない理由を並べるのではなく、

 どうすれば、

 「障碍を乗り越えて実現できるのか」

 議員に提案することであることを、

 理解し納得してもらう。

【Theory10】

議会基本条例を制定する。

流山市議会の場合は、

 「議会基本条例を制定するのだ!」と、

 当時の議員全員で決めたことによって、

 Theory1~10まで全てのことが実現可能となった。

 「議会とは何か」「議員とは何か」「改革の先にあるものは何か」

 などなど、時には職員や学識者にもサポートしてもらいながら、

 まずは議員同士でトコトン議論を重ねることで、

 市民に開かれた議会を目指す風土が醸成されていく。

 ここまで来たら、

 次のフェーズは市民を巻き込んだ議会改革。

 その先に議会制民主主義の確立と、

 顧客(市民)オリエンテッドな市政の実現が見えてくるはず。