環境に配慮した街づくり~ストラスブール調査報告その2
●街づくりにおける様々な環境配慮
ストラスブールを調査すると、自然環境に重きを置いた環境施策は即ち街づくりと総合的に考えられなければならない政策であることを痛感させられる。また、街づくりという視覚的成果が示されることで、住民も自然環境の保護等に対して積極的になっていくという相乗効果も期待される。少なくともストラスブールのトラムの導入にも当初は皆が賛成でなかったことを考慮すると、この街づくりに見える成果が環境施策に与える影響は無視できない。
●パークアンドライド
ストラスブール市がトラムを導入しようとしたきっかけが、過度に車に依存した社会生活からの脱却であり、環境への配慮であるが、決して車の利用を排除したのではなく、様々な交通機関を利用することによる、交通政策に関する最適解を求めている点が大変重要である。その一つの取り組みがトラムやバスの公共交通機関と自動車利用を組み合わせたパークアンドライドの取り組みである。
トラムやバスの郊外の乗車場所の近くに自動車の駐車場を設置し、市内中心部への車の流入を低減することで、渋滞の発生による様々な不都合を抑制するのが、このパークアンドライドの取り組みである。
調査当日は日曜日であり、実際のパークアンドライドの状況は把握できなかったが、現地に赴き、駐車場の規模や駅までの距離など交通の利便性について視察した。
●自転車利用の推進
ストラスブールではトラムの導入に合わせて、自転車利用の推進も実施してきた。ストラスブールではその多くが車道ではなく歩道に並置される形であった。
写真:歩道に併設される自転車専用道を走る自転車
このような自転車利用の推進はトラムの推進と共にストラスブールの環境配慮の交通体系の重要な位置づけとされている。トラムに自転車を持ち込み可能にしていることもそのような配慮の表れである。
写真:自転車専用道はわかりやすく示されている
●電線の地中化
外国人が日本に来て驚くことの一つは電柱の多さだそうである。ストラスブールでは電線をできうる限り地中化する取り組みを行っている。その結果、市の中心部はもちろんのこと、郊外に行っても電柱の地中化が推進されている。実際に、電線が地中化されている工事現場も視察した。
日本でも景観だけではなく、防災の観点からも電線の地中化が叫ばれているが、その高コスト体質から思うように推進されていない。ストラスブールの地中化の現場を見ると、日本のように導線を保護する空間を確保するのではなく、そのまま埋設していた。費用対効果を考えるとこのような荒いやり方も合理的なのかもしれない。検討に値する。
写真:電線等のインフラの地中化工事の様子