トラムを中心とした街づくり~ストラスブール調査報告その1
ストラスブールにおける調査報告の簡易版を現地よりお届けします。
●夜のトラム運行状況
12日の夜にストラスブール市内のトラムの運行状況について調査した。19時から21時くらいの時間帯では、郊外地域は人通りもまばらであったが、トラムは頻繁に運行されており、利用客も比較的多かった。市内中心部では、食事をする住民や観光客が見られたが、このような方々が利用をしている。トラムの運行時間は午前4時台から深夜零時前後までとの記載があったが、土曜の夜の状況を見る限りは、深夜の需要は限定的に思われた。
写真:19時前後のLycee Kleber駅の様子
●自転車が持ち込み可能なトラム
トラムには自転車を持ち込むことができる。駅は写真のようにオープンスペースであるため、自転車をホームに持ち込むことができる。トラムにも自転車を持ち込むことが許されており、ホームとトラムもバリアフリーなため、容易に自転車をトラム内に運び込むことができる。
写真で紹介している男性は、年配男性であったが、実際の乗車の様子を見た限り、自転車の運び込みに障壁はないようであった。このように、ストラスブールのトラムは年配者などにも配慮されたつくりとなっている。
写真:トラムの到着を待つ年配男性
写真:自転車をトラムに持ち込む男性
●観光客にはわかりつらい購入方法
様々な利点を持ったストラスブールのトラムであるが、外国人としての不便な部分も感じられた。トラムの乗車券の購入方法についてである。
住民はホームの入り口に設置された発券機にカードなどをかざすことでトラムの乗車券を受け取る仕組みになっている。以下に示す写真が発券機の様子である。
写真:住民が通常用いる発券機
発券機にかざすカードや乗車券を単体で買う場合は、ホーム中心部にある発券機を利用する必要がある。住民としては言葉も理解できるため、利用に問題はないと思われるが、外国人の立場として利用するといくつかの壁にぶつかる。
第一の壁は言語の壁である。基本的にはフランス語表記のみで、単純な操作は別にしてクレジットカードを用いる等の多少複雑な操作については困難が伴った。多くのEU関係の国際機関を抱える国際都市ストラスブールのトラムであるため、この点について英語などの多言語表記の機能を併設するか、表示のユニバーサルデザインがあるとより使い勝手が高まるように思われた。
第二の壁は支払い方法である。支払い方法としては、現金とクレジットカードが可能であるが、現金はコインのみの受け取りのため、細かいお金を持っていない場合はお金を両替しなければならず、不便に感じられた。また、クレジットカードの使用についても、日本製のカードを受け付けないようであったことと、前述した言語の障壁により、利用を諦めざるを得なかった。
但し、このような外国人と視点は、即ち私達日本の鉄道における発券機の現状にも当てはまる可能性があり、改めて日本の乗車券が日本に訪れる外国人にとって使いやすい形になっているのかを検証したい。
写真:乗車券の発券機
乗車券は様々な種類があり、例えば通常乗車券は1.5€、24時間乗車券は4€であった。
写真:トラムの乗車券
●トラムの環境配慮
ストラスブールのトラムは様々な点で環境配慮に気を配っている。
第一の配慮はトラムのデザインである。ベルギー人のデザイナーによってデザインされたトラムの姿は近代的ながら、歴史的な構造物が多く残る街並みとも不思議な調和を見せている。この景観との調和という観点も、トラムが住民に受け入れられた大きな要因ではないかと想像される。日本人の中は景観が環境であるという意識が低い者が少なくないが、まさにこのような視点は重要であると考える。
写真:市内中心部を走るトラム
第二の環境配慮は軌道における緑化である。トラムの軌道における多くの区間で、軌道の芝生かが行われていた。ともすると無味乾燥な風景になりがちな軌道を緑化することで、自然環境だけではなく景観環境に対する配慮もしている。
写真:芝生化された軌道