菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜共生の共創・自分らしく生きる〜

神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

かながわ農業アカデミー

調査報告書はこちらです。

第1節 調査概要

 かながわ農業アカデミー及び神奈川県農業技術センター海老名出張所を訪れ、校長他より説明を受けた後、現地の視察を行った。

第2節 かながわ農業アカデミー

目的と組織

 かながわ農業アカデミーの教育目的は、以下である。

 都市の中の神奈川らしい農業の発展を支え、また地域のリーダーとして活躍を期待されている若者に対して、農業経営実践学習と農業の技術革新・情報化・国際化に対応した学習を行う。

①農業技術の高度化・経営の専門化に対応し、近代的な農業経営を行うのに必要な技術的、経営管理能力及び組織活動能力を養成する。

②農村生活を向上させるために必要な能力を養成する。

③社会経済情勢に対応し得る幅広い視野と協調性を養成する。

④将来の農業経営に役立つ各種資格取得について援助・支援する。

(出典:神奈川県立かながわ農業アカデミーの学校案内)

 「若者に対して」と記載されており、生産技術科では若者が学ぶ一方、研究課では中高齢者も学んでいる。農業改良助長法7条5項にも設置根拠を求めることができ、他県においては農業大学校(神奈川県では平成8年に現名称に改称)と呼ばれているが、必置ではない。

課題

 学校運営に関して、いくつかの課題点が見られた。主なものは、①定員充足率と学費、②未利用施設、③存在意義である。

①定員充足率

 過去5年間の定員充足率にはばらつきがあり、欠員状態が続いている。研究課においては、生産技術科よりも充足率は高いものの、欠員が見られる。2009年度は志願倍率が高かく、アカデミー側は中高年者の農業志向の高まりと分析されていた。

 定員に占める農家の割合である農家率は、両学科ともに概ね4割程度である。農業への新規参入を目指す方々の入学は歓迎すべきことであるが、卒業後の新規参入の壁は高いそうである。

 欠員が多く見られることは、アカデミーに対する県民ニーズの有無にも密接に関わっている。今後もこのような状況が続くようであれば、学校の在り方を再検討しなければならない。

●農業アカデミー過去5年間の定員充足率及び農家率

年度 生産技術科 研究科

入校生数 農家率 定員充足率 入校生数 農家率 定員充足率

2009 38 50.0% 90.0% 23 39.1% 115.0%

2008 16 31.3% 40.0% 19 26.3% 95.0%

2007 18 44.4% 45.0% 18 44.4% 90.0%

2006 33 60.6% 82.5% 16 43.8% 80.0%

2005 20 20.0% 50.0% 17 47.1% 85.0%

平均 125 41.3% 61.5% 18.6 40.1% 93.0%

(出典:かながわ農業アカデミー提出資料を筆者が編集)

 また、アカデミーでは学生からの学費は徴収されていない。全国的には、5府県が同様に授業料を徴収していないようであるが、高卒生以上を対象とした人間を扱う施設であることも鑑みれば、妥当ではない。他県では概ね11万8千円程度の学費(高等学校の授業料程度)を徴収しているようであるが、検討されたい。

②未利用施設

 アカデミー内には、いくつかの未利用施設が見られた。撤去費用の問題もあるだろうが、古びた未利用施設の存在は、学校全体の雰囲気を壊すだけではなく、土地の有効利用及び安全性という観点からも看過できない。改善する必要がある。

③存在意義

 ①の課題とも連動するが、今回のアカデミーとの意見交換において、アカデミーが独自の教育領域を展開しているのかという点で疑問が残った。例えば、農業大学との兼ね合いにおいて、「農業大学は研究中心で、アカデミーは実践中心であり住み分けができている」との説明があったが、本当にそうであるのかは検証の必要があると感じた。例えば、秋田県では、短期大学を経て県立大学に編入されているし、北陸3県のように農業県であるにもかかわらず、農業大学校自体が存在しない例も見られる。

 

第3節 農業技術センター海老名出張所

設置経過

 平成17年4月、農業関連機関の組織再編が行われた。海老名出張所は、再編にあたり、湘南並びに県央地域農業改良普及センターが統合しても、農業者への指導が低下しないように対策を講じてほしいという要望が農業者等よりだされ、かながわ農業アカデミー内に農業技術センターの出張所として設置された。

出張所の業務と現状

 出張所の業務内容及び実績は以下である。

 ①農業者等からの緊急的要請による普及指導活動

 ②農業者等からの相談に対する普及指導活動

 ③農業技術、新規就農促進等に関する情報提供

●出張所の業務実績

年度 業務件数 うち緊急的要請件数 開庁日数 業務件数/日 緊急的要請の電話対応率

平成17年度 338 70 243 1.4 66% 職員2名

平成18年度 61 56 243 0.3 68% 職員1名

平成19年度 55 52 243 0.2 44% アカデミー職員兼務

平成20年度 18 18 244 0.1 94%

(出典:農業技術センター普及指導部「海老名出張所の設置経過と業務実績」より筆者が編集)

 出張所の業務実績を分析すると、業務件数は初年度をピークに激減している。また、平成20年度には、緊急的要請件数における電話相談の割合が9割になっている。説明者も、出張所の役割が、本センターへの取次業務になっており、効率性が悪くなっている旨を話されていた。もはや、出張所を設置している意義はまったくないといえる。早急な廃止を検討されたい。

第4節 まとめ

 かながわ農業アカデミーについては、定員の充足が目下の課題であると考える。受益者負担という観点からは、授業料の徴収も必要である。世の中の農業志向の高まりといった一般論に存在意義を求めるのではなく、そこに県民ニーズがあるのかを改めて検証する必要がある。

 農業技術センター海老名出張所については、その役割を終えたといえるので、廃止をするのみであると考える。