菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

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神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

特別養護老人ホームはもういらない!?〜代表質問の解説

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9月14日に行われた菅原直敏の代表質問の解説です。今回は2項目目の「福祉について」の中の、「特別養護老人ホームの整備について」解説します。

 

 この質問のポイントは、「特養の新設整備には慎重であるべき」という点と「有料老人ホーム、サイービス付き高齢者住宅、その他のサービスの総量を考慮し整備計画を改定すべき」という点です。

 

 

 

1.特別養護老人ホームはいらない!?

 

 「特別養護老人ホームはいらない!」ということを声高に唱えたら、有権者にそっぽを向かれてしまうかもせん。しかし、私は既存の形の特別養護老人ホームの新設には「抑制的であるべき」という考え方を持っています。

 

 それは、目測を誤ると高齢者人口がピークアウトした際に、多くの特養が負の遺産として余ってしまうのではないかという危機意識が根底にあります。

 

 特別養護老人ホームは、整備段階で多額の税金が投入されます。また、独立行政法人福祉医療機構から低利で融資を受けられたり、運営主体には法人税、事業税、固定資産税などは非課税となります。

 

 つまり、特養が有効に活用されなくなるということは、将来の世代にツケを残すことになります。既存の特養は大規模単機能であり、他の目的には使い勝手が悪い施設です。

 

 

2.高齢者人口はいつかピークアウトする

 

 かつて、神奈川県では「高校100校新設計画」という計画がありました。この結果、1973年から1987年にかけて、急激な人口増に対応するために高校を100校新設しました。それまでの高校数が50校程度ですから、いかに多くの高校が整備されたかがわかります。スローガンは「15の春を泣かせるな」。

 

 しかし、2000年代に入り、これらの高校の統廃合が急激に進んでいます。若年者の人口がピークアウトしたからです。私の近所では設置されてから20年程度で統合された高校があります。気づいたらなくなっていました。

 

 これと同じことが、将来の特養にも当てはまらないでしょうか?社会保障・人口問題研究所の試算では、65歳以上の高齢者の人口は2042年でピークアウトします。整備の目測を誤ると大変なことになります。

 

 高校100校計画の二の舞になってはなりません。

 

3.乱立する高齢者施設

 

 質疑において、神奈川県の特養待機者数が減少していることが明らかになりました。その原因として、知事は「特別養護老人ホームの整備が進んだことと併せて、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などが増加していることにより、介護を必要とする高齢者の住まいとしての、選択肢の幅が広がってきたこと」をあげています。

 

 ここは重要なポイントです。現在、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅が急激に増えており、さらに特別養護老人ホームの待機者層とターゲットが重なってきています。低廉な有料老人ホームも増え、サービス付き高齢者住宅も看取りを行うようになりました。しかも、これらの入居率が必ずしも特養のように高くありません。

 

 特養、有料、サ高住と分類や設置根拠は違うかもしれませんが、実質的にはサービスが競合している部分もある以上、これらを総合的な要介護者の受け皿ストックとして捉えて、特養を整備していく必要があると思います。

 

 さらに、「施設から在宅」への号令のもと、今後は在宅でより過ごせるような形を目指していたはずです。特養整備の際には在宅介護の限界値についても勘案する必要があるでしょう。

 


数年間の入所待ちが当たり前だった特別養護老人ホームの待機者が大幅に減り始めた。軽度の要介護者を門前払いにし、民間の施設や自宅での介護に回す国の政策が形になり始めた格好だ。一方で要介護度が低くても世話の大変な認知症の人が特養を利用できず、公費を投じた特養の一部に空きが出る矛盾も出ている。

 

4.低介護度だけれども手がかかる人の行き場

 

 ところで、待機者数が減ったもう一つの理由に「介護保険制度の改正により、平成27年4月以降、特別養護老人ホームの新たな入所者は、これまでの原則、要介護度1以上から、要介護度3以上に重度化されたこと」ことが挙げられています。

 

 現場では「要介護度1・2でも、特養でなければ見られない人もいる」という声を聞きます。例えば、徘徊が酷くて家族が面倒を見切れない場合はわかりやすい事例かもしれません。

 

 私も現場で介護に関わるものとして、このような事例はよくわかります。中には在宅介護には厳しいケースもあると思います。

 

 しかし、だからと言って特養でなければならないとするのは早計だと考えます。多額の税金を投入して豪華な特養を立てるのではなく、今後ますます増加する空き家をリノベーションするなどして、施設整備にお金をかけずに、入居施設にする仕組みを検討していってもよいはずです。グループホームの利用のあり方を変えても良いかもしれません。小規模多機能型施設も選択肢でしょう。

 

 多くの国民は「特養」が欲しいのではなく、「介護への安心」が欲しいだけです。ただ、比較的安価に利用できる入居系のサービスについては特養しかないと思い込んでいる人も少なくない為に、特養が欲しいという声になっている部分も大きいと私は捉えています。

 

5.今、最も足りないのは人

 

 現在、介護職員は足りていません。そして、厚労省の推計によると2025年には38万人の介護職員が不足する推計です。労働者人口が今後減っていくだけなので、この数字を満たすことは極めて困難でしょう。

 

 そのような中、特養を大量に整備することは、人のいない箱に税金を無駄に投入していくだけです。実際、都内だけでなく本県でも介護職員がいないために、特養としてのサービスを提供できない施設が出てきていると現場の施設長の方々から伺いました。

 

 今、優先順位が高いのは「施設ではなく人」です。

 

 特に首都圏において今後も特養をある程度整備していくのは許容せざるを得ないとしても、今後は将来世代への負担、他のサービスとの連携、人への投資という視点は不可欠であると考えます。

 


人材不足も深刻だ。神奈川県内の特養では、12年に100人分を増築したものの、職員の採用がままならず、やむなく32人分のベッドを閉鎖している。施設長(74)は、「入居申し込みは約1500人に上る。家族からの切実な声も聞くが、再開のメドは全く立たない」と打ち明ける。

 

 

6.質問の要旨

 

【菅原質問】

2 福祉について

 (1)  特別養護老人ホームの整備について

     東京都と埼玉県において、空きのある特別養護老人ホームが出始めているとの一部報道がある。私は以前から現場レベルでケアマネジャーや特養関係者から「部屋が埋まらなくなってきた」という声を聞いている。昨年6月の代表質問では特別養護老人ホームのみによらない介護の在り方を提案した。

      本県の特別養護老人ホームの入所待機者数は、平成23年10月1日24,849人であるのに対して、平成27年10月1日で17,599人となっている。この間、高齢者の人数が大幅に増加していることを考慮すると、この現象は注目に値する。

    そこで、①本県の特別養護老人ホームの入所待機者数の減少の原因をどのように捉えているのか。また、②将来的にどのような見通しを持っているのか、伺いたい。

 

【知事答弁】

 

福祉について、何点かお尋ねがありました。

  まず、特別養護老人ホームの整備についてです。

  本県の特別養護老人ホームの待機者数は、平成22年度から、約2万4,000人前後で推移していましたが、平成26年度以降、減少に転じ、最近のデータでは、平成27年10月現在で約1万7,600人と、ピーク時より3割近く減少しています。          

  減少の主な原因としては、介護保険制度の改正により、平成27年4月以降、特別養護老人ホームの新たな入所者は、これまでの原則、要介護度1以上から、要介護度3以上に重度化されたことが挙げられます。

  また、特別養護老人ホームの整備が進んだことと併せて、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などが増加していることにより、介護を必要とする高齢者の住まいとしての、選択肢の幅が広がってきたことも考えられます。

  一方、本県の高齢者人口は、急速に増加しており、とりわけ75歳以上の高齢者の増加が著しいものとなっています。

  こうした状況を反映して、介護を必要とする高齢者は、高齢者人口の上昇を上回るペースで増加しており、このままでは、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、さらに増加することが予測されています。

  そのため、県では、介護を必要としない高齢者が増加するよう、未病を改善する取組みを進めているところです。

  しかし、特別養護老人ホームは、在宅介護では難しい重篤な高齢者を受け入れる施設として、今後も必要でありますので、市町村と連携し、計画的に整備していきたいと考えております。

 

【菅原意見】

 

 まずは、特別養護老人ホームの整備についてですけれども、私は特別養護老人ホームをある程度造っていくということは、大切だと思うのですけれども、一方、危惧していることがあって、それは、知事の言葉を借りると、計画のやり方次第においては、ある種の負のレガシーになってしまうのではないか、これは、20年後、30年後のお話なんですね。現時点の対策としてはいいのですけれども、やはり、将来に負担を残さないという視点も大切になってくると思うのです。

  特養の待機者が減っているという理由の中で、選択肢が広がってきたというお話がありました。私もそう思うのです。例えば、特養、有料、そして、サ高住とあるのですけれども、今まで全然管轄も違うし、別のものだと思われていたのだけれども、例えば、有料老人ホームだと、最近は入居金もない、低廉な費用で入れる、中には、生活保護でも利用できるみたいなものが出てきて、しかも空きが多いという状況になってきたり、或いは、サ高住に関しても、今までは介護度が高くなると出て行かなければならないといったものが、今は看取りまでやるという施設まで増えてきたんですね。特養のやっているサービスと競合する形に実質的になってきてしまっているという部分があると思うのです。実際5年間の増減を見てみると、特別養護老人ホームが割合にして20%で大体5,000件、定員にして、有料老人ホームが約30%で定員にして10,000件、そして、サ高住に関しては割合にして460%、定員にして8,000件、増えているんですね。これらが別個ばらばらにどんどん無造作に増えていくと、全体のストックにおいて、やっぱり余剰が出てきてしまう問題もあるし、現在、そういうふうになっていると思うんですね。

  そろそろ整備の計画の改定の時期もやって来ると思うんですけれども、その時に、是非この視点を持っていただきたいのは、他のサービスの状況もどうなっているのかという部分を、しっかり考えて、ある時期には、そういったものが相互利用できるような仕組みを検討して、計画を考えていっていただきたいなというのが一つあります。

  あと特養に関して、やはり人ですね。この間、横浜、川崎から足柄の方まで、特養の施設管理をやられている方と意見交換をする機会があったんですけれども、皆さん一様におっしゃっているのは、介護職員が集まらないというお話なんですね。今まで東京だけのお話かなと思っていたんですけれども、職員がいないから施設が稼動できないという施設が神奈川の中でも出はじめてきている。特にショートステイなんかでは、そういったものが顕著であるということを側聞しております。そういった意味では、特養を一個建設するぐらいのお金を、ある時は人に費やしてしまう位の気概を持って、今後、介護の政策というものを、施設から人へという部分も意識をしてやっていただきたいなということを、知事、当局の皆様を含めてお願いを申し上げたいと思います。

 

7.質問動画

 


2016年9月14日代表質問その3(菅原直敏県議質問×黒岩知事答弁)

 


2016年9月14日代表質問その4(菅原直敏県議意見)