菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

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神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

医療・福祉系の複数資格を取りやすくするメリット〜代表質問の解説

9月14日に行われた菅原直敏の代表質問の解説です。今回は2項目目の「福祉について」の中の、「医療・福祉職の人材養成について」解説します。

 

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今回の質問の趣旨は、ある医療・福祉系の国家資格の保有者が他の国家資格を取りやすくしましょう」ということと「そのことを通じて、医療・福祉職のキャリアアップ、現場の多様なニーズに対応できる人材の育成を後押ししていこう」といことです。

 

本年から厚生労働省では、2021年度を目途に医療や福祉の資格に共通の基礎課程を設けたり、福祉系有資格者が保育士を取得しやすくなるよう試験科目などを一部免除したりすることを検討し始めました。

 

以下は、特に自分が関わっている福祉分野のお話を中心に考察します。

 

 

 

1.複数国家資格保有のニーズと可能性

 

福祉の現場にいると、向上心をもって果敢に挑戦していこうとしている人が一定数います。私はこのような人たちの思いが生かせるような制度設計が必要だと思います。

 

福祉の世界におけるキャリアアップの一つの指標は、資格です。特に介護福祉士や社会福祉士などの国家資格はその最低限の能力を担保するものとして認知されています。そして、これらの複数資格を取得することでよりよいサービスの提供だけでなく、自分のキャリアアップに繋げていくことを目指している人たちがいます。

 

以下に複数資格保有のイメージを一部列挙しましたが、細分化された専門性が共有されることでの可能性は相当あると考えられます。

 

介護福祉士×社会福祉士→ケアワークとソーシャルワーク

介護福祉士×看護師→介護と医療

介護福祉士×保育士→高齢者と子供のケア

介護福祉士×作業療法士→ケアとリハビリ

 

 

2.ユーザー目線の制度構築の必要性

 

しかし、実際の国家資格の制度は、制度設計者の立場が優先され、資格を目指す人の立場に立っていない部分があります。

 

例えば、介護福祉士の不足が叫ばれていますが、試験は年1回しかありません。不規則かつ多忙な現場で働く介護業界の人にとって、年1回の1月の試験日に合わせなければ試験を受けられないことは、ユーザー目線からすると非常に不都合です。

 

分野は違い国家資格ではないですが、TOEICは頻繁に試験を開催することで、多くの受験生にとって受験しやすい制度になっています。ユーザー目線に立っているからです。

 

保育士については、私も昨年来より提案してきましたが、神奈川県発案の地域限定保育士試験という回りくどい手法を経て、ようやく年2回の試験実施となりました。

 

また、介護福祉士や保育士といったケアワーク資格から社会福祉士のようなソーシャルワーク資格を目指す際、学ぶ分野が重複する部分も一部あります。このような重複を免除するようにすれば、資格取得への負担が減ります。

 

他にも様々な例を挙げられますが、資格の質を落とさない範囲において、最大限資格を取りやすい環境を制度として整備していくべきであると私は考えています。

 

特に福祉職は、時間と予算と常に戦いながら資格取得を目指している人が少なくありません。ユーザー目線の制度変更は、資格取得者が増える大きな契機となります。

 

3.現場からのニーズもある

 

現場では細分化した専門職の配置に四苦八苦しているところも少なくありません。例えば、一般的に看護師は圧倒的に不足していますが、介護現場に就業してくれる看護師は質・量ともにさらに不足しています。

 

介護福祉士から看護師にシームレスに資格取得を可能にするキャリアがあれば現場の人材不足も緩和されます。また、介護の現場がわかった看護師が増えることは、介護現場にとってもプラスです。

 

介護福祉士と社会福祉士のダブルライセンスの人がいれば、ケアワークとソーシャルワークの一体的なサービス提供も可能になります。

 

ある特定の役割しか想定していない単一資格職よりも、複数資格職の方が現場としても様々な役割を与えることができます。

 

富山型デイサービスのように高齢者・障害者・保育を一体的に提供するような現場も今後は様々な形で増えていくでしょう。様々な分野に精通している専門職の必要性は増えることはあっても減ることはないと思います。

 

4.リスクヘッジ

 

国は保育士や介護福祉士を必死に増やそうとしていますが、それはこれらの職種への需要が高いからです。しかし、高齢者人口も保育へのニーズも将来的には変動します。

 

単一の資格しか持っていない人は、既存の枠組みにしがみつかざるを得ませんが、複数の資格を持っている人は、その点のリスクをヘッジできます。また、就業の選択肢も広がります。

 

5.知事の答弁

 

知事は「医療・福祉に係る人材養成課程の一部共通化」について、答弁の中で「今後の人材不足に対応するためには、複数の資格を取りやすくし、限られた人材を有効活用する視点が必要」との認識を示し、救急救命士と介護福祉士の事例を挙げながら、「医療・福祉に係る人材養成課程の一部共通化について、国の方向性が示されたばかりで、今後議論が深められていくことから、県として積極的に国に対して働きかけてまいります」との方向性を示しました。

 

私は今後この方向性が、ユーザー目線の適切な制度となっていくように、様々な形で提言を行っていきたいと思います。

 

6.医療・福祉資格の一元化ではない

 

なお、誤解なきようにしたいのは、今回の提案は保育士、介護福祉士や看護師といった資格を一元化する内容ではありません。フィンランドに「ラヒホイタヤ」という医療や福祉にかかる資格を一元化した資格制度が過去に日本でも検討された経緯がありますが、見送りとなりました。

 

従って、介護、保育、看護などそれぞれの分野のみでキャリアを進めていく人を否定する制度ではないことは付記しておきます。

 

7.代表質問の要旨

 

 

2 福祉について

(3)医療・福祉職の人材養成について

 

【菅原質疑】

  厚生労働省では、2021年度を目途に医療や福祉の資格に共通の基礎課程を設けたり、福祉系有資格者が保育士を取得しやすくなるよう試験科目などを一部免除したりすることを検討することとしている。

本県議会でも、同趣旨の「医療・福祉に係る人材養成課程の一部共通化に関する意見書」が6月に可決された。

医療・福祉に係る人材養成課程の一部共通化は、福祉の一体的な提供だけでなく、福祉職の待遇の改善や柔軟な労働環境の創出など様々な点で優位性があると考える。

  そこで、医療・福祉に係る人材養成課程の一部共通化に関する、知事の所見を伺いたい。

 

【知事答弁】

次に、医療・福祉職の人材養成についてです。

 急速な少子高齢社会の到来に伴い、医療・福祉人材の確保は、喫緊の課題となっています。例えば、介護人材では、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、本県でも約2万5千人が不足すると見込まれています。

 労働力人口が減少する中で、今後の人材不足に対応するためには、複数の資格を取りやすくし、限られた人材を有効活用する視点が必要です。

そこで、国においては、医療・福祉人材を最大限活用するために、養成課程の見直しを行うという対応の方向性が示されています。           

具体的には、医療・福祉の複数資格に共通の基礎課程を創設し、履修期間の短縮、単位認定の拡大が検討されています。

今回の養成課程の見直し・一部共通化により、例えば、救急救命士が介護福祉士の資格を取りやすくなるというようなことが期待され、そうなれば介護現場での人材不足を補う有効な手段となります。

医療・福祉に係る人材養成課程の一部共通化について、国の方向性が示されたばかりで、今後議論が深められていくことから、県として積極的に国に対して働きかけてまいります。

 

【菅原意見】

 

医療・福祉職の人材養成についてだが、知事の答弁で、特に国に訴えていくというところを大切にしていただきたいと思う。私がこれを取り上げているのは、保育士を増やせ、介護士を増やせ、あるいは看護師を増やせということを、皆口を揃えて言う。現場の立場で立ってみると、制度が非常に現場の立場に立っていない現状がある。

だから、保育士試験の複数回開催も、私は昨年訴えていたのだが。特に福祉職の人は、給料も低い、時間もない中で、キャリアアップをしていかなければならない。そういうことを考えていくと、こういったニーズは非常に高くある。資格の質が損なわれない範囲内において、制度を設計する側の目線ではなくて、ユーザーの視点において、制度が再構築されていく形に、県としても、私もこれから色々な提言をしていくが、国に訴えていっていただきたいとお願い申し上げる。

 

8.質問の動画


2016年9月14日代表質問その3(菅原直敏県議質問×黒岩知事答弁)

 


2016年9月14日代表質問その4(菅原直敏県議意見)