介護・福祉の施設・活動を巡る旅43件目〜商店街がデイサービスを運営!?~発寒北商店街振興組合
発寒北商店街振興組合が管理・運営するにこぴあを訪れ、土屋日出男理事長を始めとする職員の皆さんから同振興組合の取り組みをお伺いしました。
1.商店街が介護施設を経営
デイサービスを運営する商店街振興組合の存在を知ったのは、テレビのあるドキュメンタリーです。実際に現地を訪れると、同組合が管理運営する地域交流施設「にこぴあ」内にデイサービスは実在した。他にも食事付き高齢者住宅、多目的レンタルスペース、レストランが併存していました。
「にこぴあ」自体は建設費約1.5億円のうち、3分の2が経済産業省の補助金でありますが、商店街振興組合がリスクをとって事業に乗り出しています。
図:にこぴあの内容(発寒北商店街振興組合提供資料)
2.商店街の衰退と住民ニーズの調査~40年後のヴィジョンを掲げて
平成年代に入り、住民のライフスタイルの変化、大規模店舗の進出や商店の跡継ぎの減少などの理由が相まって、組合員が減少するなど発寒北商店街も衰退してきました。
このような状況に危機感を抱きながら、土屋理事長は、商店街振興組合が平成20年に始めた家庭の廃食油回収事業をきっかけに、まだ商店街は地域に頼られていることを確信し様々な仕掛けを始めました。
図:商店街の活動の種類と歴史(発寒北商店街振興組合提供資料)
合言葉は「40年後さっぽろで一番住みやすいまちをつくろう」。
重要な点は、「地域コミュニティの担い手」として商店街には何が求められているのかということについての徹底したニーズ調査を地域住民に行った上で、様々な取り組みを始めていることです。
前述したデイサービスも、このニーズ調査の中から生まれました。「ハツキタ商店街事業・イベント一覧」によると、横軸に1~12月、縦軸に7種類のカテゴリをとり、その中には何十もの取り組みが存在します。
物販ではなくサービスの提供が今の商店街に求められていることであると見定めたからです。
3.リスクをとったソーシャルワーク
同振興組合の取り組みは、商店街・個店利用促進と情報発信のカテゴリを除いて、子育て支援、教育支援、世代間交流、環境・エコ、安心安全なまちづくり、地域連携・地域交流など直接的には商店街の商売とは関係のないことばかりです。もはや商店街の枠を超えています。
一方で、一部補助金の利用などがありながらも、基本的には同振興組合の原資でこれらの多様な活動を行っています。つまり、自らリスクをとっている。ここに本気度が感じられるし、いくつかの成果があがっている理由ではないかと考えます。
神奈川県においても商店街活性化の取り組みが長い間議論され、条例も制定されていますが、当事者である商店街の人々がどうしたいか、そしてそのためにリスクをとってまでも進んでいくかという点が最も重要であると感じました。本県の商店街支援もこのような側面から再構築していくとよいという知見を得ることができました。
大 和市内訪問施設・活動:15件
神奈川県内訪問施設・活動:13件
神奈川県外訪問施設・活動:15件
千里の道も一歩から
菅原直敏
ハツキタ商店街のHP