メルマガより~自然「保護」~自然「保全」、環境「保存」の違い
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○「保全」と「保存」
自然保全と自然保存という言葉は、明確に区別されて用いられないことが多いです。しかし、学説上は、保存(preservation)は人間が環境または生態系を使用しないこと(non-use)を意味し、保全(conservation)は人間による、そして人間の為の賢明な利用(wise use)を意味するとのことです。また、保護(protection)は、以上のような特別の意味付けをせず、広く自然を守っていく行為全般を表すために用います(交告尚史他『環境法入門』有斐閣アルマ,2008年19・,38ページ)。
皆さんが、自然保護を考えるときは、保全なのか保存なのか、一体どのような観点に根ざしているのかなど、厳密に考えてみることも有意義かもしれません。
○日本における自然保護
自然保護の1つの取り組みとして、自然公園の設置が挙げられます。自然公園には、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園の3種類があります。都道府県立自然公園は別にして、前者の2つの違いは名称からはイメージしづらいのではないでしょうか。3つの自然公園は、自然公園法第2条において、以下のように定義されています。
一 自然公園 国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園をいう。
二 国立公園 我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地であつて、環境大臣が第五条第一項の規定により指定するものをいう。
三 国定公園 国立公園に準ずる優れた自然の風景地であつて、環境大臣が第五条第二項の規定により指定するものをいう。
四 都道府県立自然公園 優れた自然の風景地であつて、都道府県が第五十九条の規定により指定するものをいう。
少しわかりづらいかもしれませんので、補足も加えて大まかな整理をします。
●共通点:優れた自然の風景地であるという点(国立公園はその中でも、日本国の風景を代表するに足るもの)
●相違点:
・国立公園…環境大臣が指定。国が管理主体。
・国定公園…都道府県知事の申し出を受け、環境大臣が指定。都道府県が管理主体。
・都道府県立自然公園…都道府県が条例で指定。都道府県が管理主体。
少々大雑把な説明となりましたが、一番イメージのしづらい国定公園が国立公園と都道府県立公園を足して2で割ったようなものであることがわかります。
○神奈川県における自然保護
神奈川県では、以下の自然公園があります。
●国立公園…富士箱根伊豆国立公園
●県立公園…県立丹沢大山自然公園、県立陣馬相模湖自然公園、県立奥湯河原自然公園、県立真鶴半島自然公園
先ほどの用語の定義より、神奈川県では、国定公園と県立公園の管理を行っています。国定公園の管理が県の業務であることがポイントです。管理業務は県立自然環境保全センターが行っています。同センター箱根出張所を調査しましたが、所長以下現業職員の皆さんが現場に出向いて、立て看板の整備や障害物の除去など、利用者の安全のために日々努力されている現状を理解できました。
皆さんも箱根の山などを通るときは、以上のことを思い出してみてください。