菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜千里の道も一歩から〜

菅原直敏(神奈川県議会議員)議会報告ブログ〜共生の共創・自分らしく生きる〜

神奈川県議会議員菅原直敏の議会報告のブログです。神奈川県大和市選出。無所属。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士。

日本一チャレンジする町宣言!〜横瀬町の取り組み「よこらぼ」

 

 

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写真:今回は半分が市議・県議(但し、両名ともビジネスにも関わる)、半分がビジネスマンという民官混合チーム

 

埼玉県横瀬町を訪れ、富田能成町長始め担当職員の方々から、官民連携プラットフォーム「よこらぼ」の取り組みについてのお話をお伺いしました。

 

調査理由は、日々取り組んでいる官民連携を超えた取り組みの中で、仲間の一人が「よこらぼ」の取り組みを発見し、直接話を聞きに行こうとなったこと。したがって、こちらもいつものごとく民官混合チームでの訪問となりました。

 

当初想定していた時間を超え、富田町長は熱くよこらぼにかける思いをお話しくださいました。

 

 

誤解を恐れぞに端的に言えば、「よこらぼ」とは、企業や団体・個人が自らの活動を行うにあたり、横瀬町が様々な形で支援・協業しますという取り組みです。この手の官民共同の取り組みやプラットフォーム自体はそれほど珍しくないのですが、横瀬町の特徴は、圧倒的なスピード感(公において)、ユーザー目線の徹底、なんでもあり感満載といったところです。

 

キャッチフレーズは「日本一チャレンジする町宣言!」〜あなたのプロジェクトを成功させるなら横瀬町へ。

 

なお「よこらぼ」の名前の由来は以下の説明から取られています。

 

『横(よこ)』瀬町で行政と住民、プロジェクト提案者がコ『ラ』ボレーションしていくことで、新たなプロジェクトを創造していく『ラボ』ラトリー(研究所)をイメージしています。

 

「よこらぼ」を始動するに至った経緯ベースには、危機感があります。

 

富田町長は「人口減少社会に立ち向かう」という思いで町長選挙に2回目の挑戦で当選しました。横瀬町のように人口8,000人程度の町は、消滅可能性都市に分類され、将来への自治体継続の不安もついてきます。しかし、既存のやり方では自治体が抱える課題を解決することは極めて困難であり、外部資源を取り入れながら、様々なチャレンジを同時多発的に町内に巻き起こすことにより、その解決手段としていきたいという明確な思いが「よこらぼ」の着想に至りました。

 

話は逸れますが、富田町長のお父様は町長を長期を務めた人であり、いわゆる「世襲」町長に一見思われます(最初の選挙は落選していますが)。一方で、彼の経歴を拝見すると、日本長期信用銀行から、メキシコ留学や米国視点勤務を経るなど、明らかに金融ビジネス畑の人です。このような古き良き地元の感覚と先鋭的でグローバルな経営感覚を併せ持っている類い稀なる人材であるとの印象を持ちました。意見交換中には、経営やテクノロジーにかかる用語も違和感なく交わされ、町長というよりも、企業の経営者と話しているという印象でした。

 

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写真:笑顔で語る富田町長(右)、民間で培った知見は聞いていてワクワクさせられる

 

 

 

1.とりあえず受ける

 

「よこらぼ」では、町内外の企業・団体・個人誰でもがプロジェクトの応募をできます。

 

参加資格は、

(1)横瀬町でプロジェクトを行う意志

(2)プロジェクトの社会性

 

のみ。

 

申し込みは毎月行っており、締め切りは25日。

 

その後、町議代表、区長代表、商工会議所、金融機関などから構成される審議会での評価によって点数付けされ、最終的に町長の決定によってプロジェクトの採択の可否が決まります。

 

審査通過後は以下の2点を守ることが必要となります。

 

1.月に1回以上の横瀬町への活動報告

2.年に3回以上の現地での活動

 

 

応募はホームページの「応募フォーム」から行うのですが、役所の申請書にありがちな無駄な事項の記入欄はなく、簡潔にまとまっています。そしても最も重要な点は、「まちがあなたに何をして欲しい」ではなくて、「あなたが何をしたくて、町にとっても何かプラスはあるか」というスタンスです。つまり、ユーザー目線が徹底されています。

 

圧倒的なスピード感、ユーザー目線の徹底、なんでもあり感満載を体現することで、プロジェクトが開始される敷居を低くしています。

 

2.Win-Winをたくさんつくり、人が人を呼ぶ

 

衝撃的(?)な「よこらぼ」の始動から、この取り組みは様々なメディアの注目も集めるようになりました。町長曰く「無名な横瀬町にとって、町名がメディアに出るだけでも大きな成果」。そして、これが呼び水になり、案件が案件を呼ぶ好循環が生まれつつあります。

 

平成28年10月から平成30年2月までの提案件数は50件、採択件数は30件です。ほぼ、毎月提案があります。主な分野は、新技術活用・開発関係10件、教育・子育て関連6件、シェアリングエコノミー関係5件です。

 

最近では、2月に提案された「小児患者の初期医療をLINEアプリで診断することで、病院に行くべきかどうかを仕分けられる取り組み」を採用し、早速翌月の予算議会に提案するというスピード感です。民間では早くはないですが、行政や議会にのスピード感では圧倒的であることは間違いありません(他の自治体なら翌年度の3月議会に提案される)。もちろん根底にあるのは危機感です。町民のためになる取り組みを行政の都合で先送りすることは、大きな機会損失を生むからです。

 

 

町長曰く「Win-winをたくさんつくれば、人が人を呼んでくれるようになる」とのこと。

 

「よこらぼ」で採択されている取り組みの大半は補助金事業ではありません。むしろ、町の資源を応募者の活動に有効に使ってくださいという類のものです。しかし、お金以外の支援を必要としている人は意外に世の中にたくさんおり、それらが横瀬町でマッチングし、応募者にも、町役場にもそして町民にもWin-winである取り組みがだんだんと広がってきています。

 

その結果、元案件が、子案件、孫案件として展開されているものもあります。

 

その最たるものが以下の動画。この動画、日本国内のトップクリエイター達が無料で町のために作ったものです。おそらく、神奈川県あたりが、大手広告代理店を通してつくらせたら2,000万円以上は平気で飛んでいってしまう代物です。

 

これも、元々は横瀬町にキャンプに来た青年達が役所の職員と交流を持つという元案件があり、横瀬町の学校でキャリア教育を行うという子案件があり出来上がったものです。

 


YOKOZE CREATIVITY CLASS

 

3.リスクを認識しながら走る

 

このような挑戦的な取り組みには、もちろん多少のリスクは伴います。そして、多くの自治体はこのリスクを過剰に評価して最初の一歩を踏み出すことができません。

 

富田町長はこう考えます。

 

「何をやってもリスクは大なり小なり存在する。」

 

だから

 

「リスクを認識しながら、走る。」

 

ということです。

 

決してリスクを度外視しているわけではなくて、それを認識しながら進むことを決断しているのです。案件によっては、ボランティア保険への加入なども求めますし、案件を採用するときに町長の責任において様々なリスクへのスクリーニングも行います。もちろん、完璧はありません。今はないようですが、将来は何か問題が起こるかもしれません。でも、それを挑戦の結果と前向きに捉えるか、挑戦したから起こってしまったミスだと後ろ向きに捉えるか、ここら辺は議決機関の町議会の意識が問われるところです。

 

 

そして、何よりもこのような時代にあっては

 

「何もしないことが最大のリスクである。」

 

ということを、私たちは認識することだと思います。

 

採用された案件の中には、結果的に思ったような花が開かないものもたくさんあるでしょう。でも、挑戦的な取り組みというのは、たくさんの失敗の中に大きな果実が実るものです。また、失敗と思われる多くの取り組みも、実は次の成功への過程である事もしばしばです。

 

今後の課題としては、より町の課題にフォーカスした取り組みを増やすことを挙げられていました。また、横瀬町の規模では対応できな事例も予測されることから、県や近隣自治体との協業の必要性も語っておられました。

 

 

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別れ際に、町長は「皆さんも何か案件を申し込んでください」とのお申し出がありました。もちろん、半分は冗談でしょうが、常に新しい取り組みを外部から入れて町をよりよくしていこうという気概を感じました。

 

正直、この視察を申し込むまで横瀬町のことを私たちは全く知りませんでした。しかし、帰り際に、ビジネスマンの参加者が「こういう自治体だったら協業して見たいよね」といったことが答えです。

 

最後になりましたが、ご対応してくださった、富田町長を始め職員の皆様に感謝申し上げます。

 

よこらぼ」のホームページ

 

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