日泰の学術・産業連携〜お互いがWin-WInになる取り組みとは
泰日工業大学(Thai-Nichi Institute of Technology)を訪れ、Bandhit Rojaraynont学長から同大学の概要についてお伺いしました。また、株式会社Helteがタイと日本の間で進めるSailプロジェクトについて、後藤学代表からお伺いしました。
1.泰日工業大学(TNI)
泰日工業大学は、1973年に設立された泰日技術振興協会を母体として2007年に設置された大学です。設立経緯と名称が示す通り、「ものづくり文化の継承と社会貢献」を掲げています。
年間1,200人前後の学生が入学し、4,000人以上の生徒が在籍しています。2007年にできた後発の大学ですが、泰日技術振興協会の行なってきた種々の取り組みの信頼性もあり、順調に学生数を確保しているとのことでした。
TINの6つの中核価値は、カイゼン、ものづくり思想、反省、自・他の尊重・誠実・公益意識です。まさにこれらは日本の企業理念に通ずるものがあります。また、人材育成として、語学・コミュニケーション力、組織力、専門技術の3つに重きをおいています。
学生と接して感じたのは、日本語にも堪能で非常に優秀な学生が育成されているということです。就職率は100%で、日系企業がその内4割をしめるとのことでした。日系企業の中には中小企業も含まれており、人材難にあえぐ企業には一つの可能性でもあると感じました。
2.Sailプロジェクト
株式会社Helteは、日本のシニアが「日本語の先生」になり、海外で日本語を勉強している学生と繋がるSail事業を行なっています。一例として、高齢者施設のシニアが、タブレッドを通じて外国の学生と会話をします。
「多世代×多国籍×IT」の新しい交流プログラムを標榜しています。特に、タイでは、バンコク市内の12校と提携し、多くの学生がこのサービスを利用し始めています。訪問した泰日工業大学でも提携を結んでいます。
今回は、学長などの学校関係者や私たちが見守る中、大学生の女性が藤沢市にある有料老人ホームの利用者の方々とお話しをするデモンストレーションが行われました。女性と男性の利用者が代わる代わる楽しそうにお話しをしていたのが印象的でした。
途中からは、鈴木恒夫藤沢市長も施設を訪れており、対話に参加されていました。
代表の後藤さんからお話をお伺いすると、既にこの対話の交流はリアルにも繋がっており、タイの学生が対話をしてくれている利用者がいる寒川町の施設を実際に訪れたそうです。規模は小さいかもしれませんが、既存の観光では作り上げることができないインバウンドを生んでいます。
3.モノづくりからコトづくり
泰日工業大学では、ものづくりの理念を基本としていますが、その先にあるものづくりに価値をいかにのせていくのかという点について学長にお伺いしました。つまりコトづくりの視点です。
学長もこの点は非常に意識されているようで、コトづくりの重要性についてお話をされていました。日本では既に課題になっている少子高齢化もタイでも進行しているようで、この点も踏まえて、ソーシャルワークやヘルスケアと関わっていくことについて、様々なコラボレーションを日本に期待されていました。
Helteのようなサービスはものづくりの視点からだけでは生まれず、学長がいち早く、そのサービスとの連携を表明したのも、将来を見据えてのことであると感じました。
神奈川県としても、様々な側面から連携していける事例であると考えます。
神奈川県では様々な創業支援が行われていますが、現在の創業はテクノロジーの力を用いて国境を越えて行われることもしばしばです。Helteも本社を千葉県から神奈川県に移すとのありがたいお話もありましたが、このような企業のニーズを捉えて進めていく必要があると考えます。
対応くださった、Bandhit Rojaraynont学長、後藤学代表初め関係者の皆様には感謝です。
千里の道も一歩から
神奈川県議会議員
菅原直敏