介護・福祉の施設・活動を巡る旅63件目〜社会資源が潤沢にある国の貧困、乏しい国の貧困〜ドゥアン・プラティープ財団
ドゥアン・プラティープ財団を訪れ、議連としてお持ちした子供用歯磨き粉、横浜市の実業家である小島様がお持ちしたお菓子やオムツを財団の教育施設にいる子供達やスラムの老人たちに寄付しました。
クロントイスラムを周回した後、同財団の施設に戻り、職員から財団の取り組みについてお話をお伺いしました。
1.ドゥアン・プラティープ財団
1952年にクロントイスラムに生まれたプラティープ先生(財団創始者)は、1968年から、スラムにおいて両親が働きに出ている間に子どもを預かり、教育する活動を始めました。一日1バーツを受け取って行うので「1バーツ学校」と呼ばれた取り組みです。
このような取り組みが認められ、国際的な様々な賞を受賞し、その賞金を財源に1978年に設立されたのがドゥアン・プラティープ財団です。
同財団のホームページによると以下の事業が実施されています。
1、教育推進事業
○教育里親制度
○芸術プロジェクト
○難聴児教育
○おはなしキャラバン
○ドゥアン・プラティープ幼稚園
2、スラム地域開発事業
○スラム地区の幼稚園支援プロジェクト
○クロントイ信用組合
○高齢者プロジェクト
3、人材育成事業
○青少年育成プロジェクト
○エイズ予防対策プロジェクト
○「生き直しの学校」プロジェクト
4、緊急支援事業
○クロントイ消防隊
○津波プロジェクト
2.クロントイスラムの現状
「タイ国内には2,000箇所以上のスラムがあると言われており、その多くがバンコクとその周辺に集まっています。タイ人口の10%が住むバンコクだけでも1,800箇所のスラムが存在し、バンコク人口の20%がスラムに住んでいます。」
「クロントイスラムは約80,000人が住む、バンコク最大のスラムです。バンコクの玄関港であったクロントイ港へ仕事を求めて多くの人々が集まり、スラムを形成していきました。最初は数十世帯であったのが徐々に増えていき、1991年には世帯数が6,000以上に及びました。」
同スラムは、様々な課題を抱えています。上下水道、公衆衛生、教育、立ち退きそして高齢化などです。これらの問題の背景には、政府の社会保障の不備や、そもそも住民登録ができていない住民が一定数いるといった大きな課題もあります。
スラム内を一通り回りましたが、ゴミがあちらこちらに散らかっていたり、下水処理がなされないままに垂れ流される汚水が側溝を流れていたり、日本でいう要介護状態の人が布団に放置されていたりと、日本にいると見ることがない風景が広がっていました。
一方で、「スラム=危険」というイメージとは程遠く、行き交う人々とは何度もタイ語で挨拶を交わしました。財団の取り組みもあり、住民の連帯を醸成する取り組みを行っていることもその背景にあると感じました。
3.どのようなアプローチで課題解決するか
課題山積のクロントイスラムですが、いかなる手法を用いることが適切なのかについて種々考えさせられました。日本であれば、これらの問題の解決をまず行政に委ねてというプロセスになりがちですが、このスラムくらいの課題レベルになると、公からのアプローチからのみでは解決は極めて困難です。
財団の運営も全て寄付から成り立っていますが、このような民間の取り組みの良さを生かしながら、民官が相互補完的に課題解決のアプローチを行っていく方法が模索できるのではないかと感じました。
神奈川県や県内自治体との比較で考えると、相対的貧困について議論になることが増えていますが、いかに日本が社会資源に恵まれた国であるかを実感させられました。つまり、タイでは支援のための社会資源自体が乏しいのに対し、日本は社会資源が豊富であるのにそれが上手く繋げられていないことが大きな違いです。
抱える課題のレベル感は大きく異なりますが、違うからこそ日本の課題の本質について客観的に考えることができました。
対応してくださった財団の皆さんに感謝です。
参考文献:ドゥアン・プラティープ財団ホームページ
大 和市内訪問施設・活動:15件
神奈川県内訪問施設・活動:20件
神奈川県外訪問施設・活動:25件
日本国外の訪問施設・活動:3件
千里の道も一歩から
神奈川県議会議員
菅原直敏